日本人の礼儀とマナーについて
○「礼儀」「マナー」の定義とは?
「礼儀」「マナー」という言葉は、同じようで、少し意味が違うと思いませんか?デジタル大辞泉によりますと、以下のように定義されています。
・礼儀・・・人間関係や社会生活の秩序を維持するために人が守るべき行動様式。特に、敬意を表す作法。
・マナー・・・態度。礼儀。礼儀作法。
同じように思えると思います。実際に、マナーの定義に「礼儀」とありますからね。しかし、違いに目を向けてみると、「礼儀」には「敬意」、「マナー」の方には、「態度」とあるので、「礼儀」には、「相手に対する尊敬の意」、マナーには、「その行動が暗黙の了解である」というような違いがあると思いませんか?
○外国人から見た日本人は「礼儀正しい」!
実は、私は、欧米と西欧への留学経験があります。双方とも半年ほどでしたが、様々な国の人から、「Japanese=polite」と言われました。Politeとは「礼儀正しい」という意味です。理由を聞いてみると、「時間通りに来る」「いつも授業中静か」「シャイ」「親切」「ルールを守る」からと言うのです。私たち日本人にとっては、これらのことは、ごく当たり前であり、約束やルールを守ることが暗黙の了解、つまり「マナー」であると思っていますが、それがなんと、外国人からしてみると「日本人のイメージ」だというのです。それも、「manner」とは言われず「polite」と表現されています。
つまり、裏を返してみると、外国人からしてみると、それらのことを行うということは、なかなか難しいこと、を意味しているのだと思います。確かに、日本人の中には、「外国人は時間を守らない」というイメージを持っている人は多くありませんか?しかし、そのことがまた、他国では「当たり前」のことなのです。
このように、日本人が「マナーを守っている」ことが、相手に対して敬意を持っていることを意味する「礼儀正しい」と表現されるのは、面白いと思いませんか?
○海外生活の中で、外国人から言われたこと
また、欧米と西欧への留学生活において、共通して双方の国の人から言われたことがもう一つあります。それは、「日本人は『すみません』と『ありがとう』をよく言うよね!』ということでした。もちろん、当時は現地の言葉で話していたのですが、「日本人はみんな言い過ぎだよ~」と言われました。
日本人にとっては、「すみません」や「ありがとう」を言わないと、相手に対して失礼だと思われるかもしれない...と、言わないことに対してマイナスイメージを持つことが多いと思いませんか?しかし、外国人からしたら、「ありがとう」と言われるほどのことをした訳でもないし、「すみません」と言うほど、悪いことをしていない、と言う解釈になるようです。特に、「ありがとう」と言う言葉は、本来、「お礼」ですので、「礼儀」の筈ですよね。それが、いつの間にか、言わないといけない・・・と思ってしまうように、お礼を言うことが、「マナー」になっているのかもしれません。
以上のように、日本人からしたら「マナー」であることが他国からしてみると「礼儀」であり、日本人から「礼儀」と思っていることが、いつの間にか「マナー」になっているというように、目的が変わってしまっていることは、なかなか興味深いと思います。
一旦、定義に戻り、どのような行為が「礼儀」であり、「マナー」であるのか、少し考えてみるだけで、普段ついつい口走ってしまう「ありがとう」という言葉を、「マナー」的な意味から「礼儀」的な意味であることを踏まえながら発すると、気持ちが篭っている言葉に変化するかもしれませんよ。